EU RoHSに関するFAQ

改正RoHS指令(2011/65/EU)と半導体製造装置

SEAJ環境情報専門委員会

公開:2018/11/09

更新:2022/12/26

  • * 本FAQは、環境法規制解釈の参考情報としてご活用いただくことを目的としてSEAJ環境情報専門委員会が作成したものです。
    執筆者の知見に基づく独自の見解を含んでおり、法的厳密性を保証するものではありません。法令の内容解釈に関しましては、必ず原文をご参照の上、各社様の判断でご対応下さい。

EU RoHS指令の正式名称は何ですか?また、要求事項は何ですか?

EU RoHS指令の正式名称は、"Directive 2011/65/EU of the European Parliament and of the Council of 8 June 2011 on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment"であり、日本語では「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する2011年6月8日付欧州議会および理事会指令2011/65/EU」と訳されます。

RoHS指令の要求事項は、

  1. 電気電子機器を構成する均質材料あたり、付属書IIに定める規制物質をそれぞれの最大許容濃度を超えて含有しないこと
  2. 電気電子機器が(1)の要求事項を満たしていることを示すため、製造者は技術文書を作成して保管し、製品にCEマーキングを表示するとともにEU適合宣言書(Declaration of Conformity; DoC)を添付すること

となります。付属書IIに定める規制物質についてはQ4をご参照ください。

改正RoHS指令(RoHS2)の主な改正点は何ですか?

  1. 旧RoHS指令(RoHS1; 指令2002/95/EC)で適用範囲外であったカテゴリー8(医療機器)および9(監視制御機器)製品が段階的に対象となる*1 ほか、新たなカテゴリーとして「11. その他の電気電子機器」が追加され、明示的に除外されているものを除くすべての電気電子製品が対象となりました*2

    *1医療機器(体外診断用以外)および監視・制御機器(産業用以外):2014年7月22日より適用
    体外診断用医療機器:2016年7月22日より適用
    産業用監視・制御機器:2017年7月22日より適用

    *2カテゴリー11製品を含む、旧RoHSの適用範囲外でありRoHS2で新たに対象となった製品は2019年7月22日より適用

  2. 規制物質リストが本文から付属書に移され、より簡易な手続き(委任立法手続き)により規制物質の追加が可能となりました。2015年6月には委任指令(EU)2015/863によりフタル酸エステル類4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が新たに規制物質リストに追加されました。

    フタル酸エステル類の規制開始日は以下の通りです。

    • カテゴリー8・9以外:2019年7月22日
    • カテゴリー8・9:2021年7月22日

    なお、規制開始日以前に上市された製品のスペアパーツ・補修用部品などには適用されません。

  3. 製品がRoHS指令の要求事項を満たしていることを示すために、整合規格EN IEC 63000に従った技術文書の作成及び保管、製品上へのCEマーキングの表示およびEU適合宣言書(Declaration of Conformity; DoC)の添付が義務付けられました。

RoHS指令における「電気電子機器」とは何ですか?

  • RoHS指令において「電気・電子機器(electric and electronic equipment)」は、「正常に動作するために電流または電磁界に依存する機器、およびそのような電流および電磁界の生成・伝送・測定のための機器であり、交流1000ボルトおよび直流1500ボルトを超えない定格電圧における使用のために設計されたもの」と定義されています。また、「電流または電磁界に依存する」とは、「機器の意図された機能の少なくとも1つが電流または電磁界を必要とすること」とされています。

RoHS指令の規制物質はどのようなものですか?

  • RoHS指令の規制物質は、付属書IIに各物質の均質材料あたりの最大許容濃度とともに記載されています。

    付属書II 第4条(1)の規制物質および均質材料における重量あたりの最大許容濃度*3

    1. 鉛 (0.1%)
    2. 水銀 (0.1%)
    3. カドミウム (0.01%)
    4. 六価クロム (0.1%)
    5. ポリ臭素化ビフェニル (PBB) (0.1%)
    6. ポリ臭素化ジフェニルエーテル (PBDE) (0.1%)
    7. フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) (0.1%)
    8. フタル酸ブチルベンジル (BBP) (0.1%)
    9. フタル酸ジブチル (DBP) (0.1%)
    10. フタル酸ジイソブチル (DIBP) (0.1%)

    このうち、(7)~(10)のフタル酸エステル類の規制は、2019年7月22日(医療機器および監視制御機器は2021年7月22日)以降に上市される製品およびそれらのスペアパーツに対して適用されます。

    *3欧州委員会委任指令(EU)2015/863による改定後のもの

どのような製品がRoHS指令から除外されていますか?

  • 第2条(4)の規定により、以下の製品にはRoHS指令が適用されません。

    1. 武器、兵器、軍需品
    2. 宇宙での使用を意図した機器
    3. 本指令の適用範囲外となる他の機器に組み込まれることを意図して設計された機器で、その機器に組み込まれた状態でのみ機能するもの
    4. 大型据付式産業用工具(LSSIT)
    5. 大型固定式設備(LSFI)
    6. 人および貨物を輸送する手段(形式認証のない2輪電動車を除く)
    7. プロフェッショナル用ノンロード可搬機械
    8. 能動型埋め込み式医療機器
    9. 専門家によって設計、組み立て、設置が行われ、定められた場所で永久的に使用されることが意図された太陽光発電システム用太陽電池パネル
    10. 専ら研究及び開発目的のみのために設計され、B2Bベースでのみ入手可能な機器
    11. パイプオルガン

RoHS指令から除外される「大型据付式産業用工具」とは具体的にどのようなものですか?

  • 「大型据付式産業用工具(Large-scale stationary industrial tools;以下LSSITと表記)」は、「特定の用途のためにともに機能する機械・装置及び/又はコンポーネントの大規模な組立物であって、産業の製造施設又は研究開発施設内の所定の場所に専門家によって恒久的に設置・撤去され、専門家により使用・維持されるもの」*4と定義されています。

    *4RoHS指令第3条(3)のSEAJ環境情報専門委員会による試訳

    「大規模」が具体的にどのような規模のものを指すのかについては、指令本文には定義されていませんが、欧州委員会発行のFAQに以下のような製品が例示されています。

    • コンピュータ内蔵NC旋盤
    • ブリッジ式フライス盤・ボール盤
    • 電子ビーム、レーザー、高輝度光、深紫外線欠陥検知システム
    • 同等の大きさや複雑さを持つもの

    ただし、これらの例はあくまで法的拘束力のない「目安」として用いるべきで、自社の製品がLSSITであると判断する際の根拠を説明するのは個社の責任となります。

RoHS指令から除外される「大型固定設備」とは具体的にどのようなものですか?

  • 「大型固定設備(Large-scale fixed installations;以下LSFIと表記)」は、「複数の種類の装置(および該当する場合はその他の機器)の大規模な組み合わせであり、あらかじめ決められた専用の場所で恒久的に使用されることを意図して専門家によって組立および設置が行われ、また撤去が行われるもの」*5と定義されています。

    *5RoHS指令第3条(4)のSEAJ環境情報専門委員会による試訳

    LSSITと同様、「大規模」が具体的にどのような規模のものを指すのかについては、指令本文には定義されていませんが、欧州委員会発行のFAQに以下のような基準の一例が挙げられており、いずれかを満たしていればLSFIと考えることができると記載されています。

    • 輸送時の寸法がISO20フィートコンテナ(5.71m×2.35m×2.39m)を超える
    • 総重量が44tを超える
    • 組み立て/解体に高荷重クレーンが必要
    • 設置環境の改造(基礎強化など)が必要
    • 定格出力が375kWを超える

    自社製品をLSFIと判断する際にも、LSSITの場合と同様に、根拠を説明するのは個社の責任となることにご注意ください。

「均質材料」とは何ですか?

  • RoHS指令における均質材料(homogeneous material)とは、「全体的に均一な組成を持つ単一材料または複数の材料の組み合わせからなる材料で、ねじの取り外し、切断、破砕、研削、研磨などの機械的手段により異なる材料に解体または分離できないもの」と定義されています。

「適用除外用途」とは何ですか?

  • 付属書IIの規制物質について、科学的・技術的に代替が困難な用途に限り、例外的に使用が認められる用途を「適用除外用途(exemption)」といい、付属書IIIおよびIVに記載されています。

    • 付属書III:すべての製品カテゴリー(カテゴリー1~11)に対して有効
    • 付属書IV:医療機器(カテゴリー8)及び監視制御機器(カテゴリー9)に対して有効

    適用除外用途には個別に有効期限が設定されているため、部品や材料がどの適用除外用途を利用しているかを把握し、個々の適用除外用途の有効期限によってその部品や材料が使用可能かどうかを管理することが必要です。

    適用除外用途の延長が必要な場合は、有効期限の18か月前までに欧州委員会に対して延長申請を行う必要があります。

半導体製造装置はRoHS指令の対象になりますか?

  • 半導体製造装置が「大型据付式産業用工具(LSSIT)」または「大型固定設備(LSFI)」に該当する場合は、RoHS指令の対象外となります。参考として、自社の半導体製造装置がRoHS指令の対象になるかどうかを確認するためのフローチャートを以下に示します。

    判断のためのフローチャート(参考).png
    判断のためのフローチャート(参考)

    なお、半導体製造装置に付随する汎用の監視・制御機器やIT機器(計測器・パソコンなど)はそれぞれ単体の電気電子機器としてRoHS指令の対象となりますので、注意が必要です。

CEマーキング、EU適合宣言書、技術文書とは何ですか?

  • CEマーキングとは、EU域内で上市される製品が、(1)欧州の全ての関連法規の要求事項を満たしており、(2)適切な適合性評価が行われていることの自己宣言です。製品にCEマーキングが表示されていることで初めて欧州での流通が可能となります。
    製品ごとの関連法規の例としては、

    • 電気電子機器:低電圧指令(LVD)、電磁両立性指令(EMCD)、改正RoHS指令
    • 玩具:玩具指令(Toy Directive)
    • 医療機器:医療機器指令(MD)、体外診断用医療機器指令(IVD)
    • 機械製品:機械指令(Machinery Safety Directive)
    • エネルギー関連製品:エコデザイン指令

    などがあります。

    EU適合宣言書は、製品がCEマーキングの表示条件に適合していることを示すために、製品に適用されるすべての関連法規と、それらの関連法規の適合性評価のために使用した整合規格の一覧を記述する宣言書です。関連法規により第三者認証機関の認証が必要な場合があり、その場合はその第三者認証機関の名称を明記する必要があります。

    技術文書は、関連法規への適合を示すために整合規格の要求に従って集められた技術的な情報をまとめた文書です。RoHS指令においては、整合規格EN IEC 63000の要求に従い、製品を構成する全ての部品および材料に関する物質規制適合の証拠(エビデンス)と、各エビデンスと製品中の部品および材料との関係を示す情報をまとめたものが技術文書となります。技術文書は製品の上市から10年間保存し、当局の求めがあった場合に提出する必要があります。

「整合規格」について教えてください。

  • CEマーキングに関連する法規制には、適合性評価のための手順としての規格が用意されており、それらを「整合規格(harmonised standards)」と呼びます。各指令のための整合指令は欧州官報により告示され、欧州委員会のHarmonised Standardsのウェブサイトに一覧リストが掲載されています。

    RoHS指令の整合規格はEN IEC 63000:2018「有害物質規制に関する電気電子製品の評価のための技術文書」です。EN IEC 63000:2018には、製品のRoHS指令への適合を証明するための技術文書の構造や、個々の部品や材料について取得すべき物質規制適合のエビデンスの種類などが記述されています。

RoHS指令の要求事項を遵守するために重要なことは何ですか?

  • 自社が上市する製品のRoHS指令への適合は、「製品の環境品質の保証」と考えることができます。上市するすべての対象製品がRoHS指令に適合していることを保証するためには、

    • 製品カテゴリーの特定(適用時期・利用可能な適用除外用途の特定)
    • 設計・部材選定・調達の各段階におけるRoHS要求事項の確認
    • サプライチェーン上における含有物質情報管理
    • 製造工程における汚染管理

    を確実に行うためのマネジメントシステムを構築することが必要となります。

    JIS Z 7201:2017「製品含有化学物質管理-原則及び指針」に、ISO9001の品質マネジメントシステムにRoHS指令やREACH規則などの化学物質規制への対応を統合するための原則及び指針が記述されています。製品のRoHS適合のためには、このような指針を参考にして自社の品質マネジメントシステムに含有化学物質管理を組み込むことが重要です。

中古品にはRoHS指令は適用されますか?

  • 改正RoHS指令の施行当初は、一部の電気電子機器の再販・修理・再利用といった二次市場における取扱い(secondary market operations)や、それらのスペアパーツによる製品寿命の延長を可能にする規定が設けられておらず、中古品への適用については不明確な状況が続いていました。これを受けて、2017年11月21日に「指令(EU)2017/2102」がEU官報に告示され、中古品へのRoHS指令の適用に関する条件が明確化されました。

    これにより、その製品にまだRoHS指令が適用されていない時期にEU市場に上市した製品を、その製品の適用日以降に中古品として再びEU市場で販売する場合は、RoHSに対応する必要がないことが明確になりました。また、適用日以前に上市された製品の修理・アップグレードのためのスペアパーツは、その製品の適用日以降もRoHS非対応の状態で流通可能なことが示されました。

    ただし、ここでいう「中古品」はあくまでEU市場で上市された経歴を持つ製品のことを指し、EU以外の地域で新品として販売されたものを中古品としてEU域内に持ち込む場合は、EUにとっては「新品を上市する行為」とみなされますので注意が必要です。

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