ブックタイトル2017年度 SEAJ 春季講演会

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2017年度 SEAJ 春季講演会

2017年度 SEAJ 春季講演会SEAJ Journal 2017. 8 No. 158 152017年度 SEAJ 春季講演会タイトル所属所属氏 名2017年5月25日(木)、東京・大手町のLEVEL XXI(レベル21)にて、SEAJ 春季講演会が開催された。今回は、日本アイ・ビー・エム株式会社、執行役員 最高技術責任者(CTO)の久世 和資氏 をお招きして、『コグニティブ・コンピューティングによる社会の変革』と題してご講演いただいた。本稿はその講演要旨をご紹介する。AI は、一般には「人工知能(Artificial Intelligence)」と訳されるが、IBM では「拡張知能(Augmented Intelligence)」と解釈している。人になり替わるものではなく、あくまで「人の知能をサポートする」ものと考えている。そして、コグニティブ・コンピューティングとは、AI を活用して、自ら理解、推論、学習するコンピューティングシステムのことを指す。1.IBM の研究開発への取り組みIBM は、世界13カ所に研究所を有しており、約3000人の基礎研究員を擁している。日本においても、4番目に古い研究所として東京研究所を設けている。同社の研究所は、70年以上前から数多くの優れた研究成果を世に送り出してきた。「RAMAC」などの先端コンピューターシステムだけでなく、STM(走査型トンネル顕微鏡)、常温超電導、SiGe、Cu 配線、SOI、カーボンナノチューブを使ったリングオシレーターなどをいち早く発表、世界に衝撃を与えてきた。現在も先進的な研究を推進しており、物理、化学の基礎研究から電子工学、計算機科学、数理科学、行動科学、さらにはサービス科学まで研究分野は拡大している。サービス科学とはまだ始まって10年程度という比較的新しい分野で、新しいサービスの開発、検証、評価などに、サイエンスとエンジニアリングを活用することを目指している。2.Watson 登場の背景人間の歴史を振り返ってみると、技術革新は常に人間の能力の拡張・拡大の歴史だった。肉体的限界は船や飛行機、建機の発明によって乗り越えた。情報伝達の限界は、手紙に始まり、電子メール、そして現在はツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディアによって乗り越えた。生産性の限界は算盤からコンピューターの発明、さらには半導体の進化によるIT 技術の活用で乗り越えている。しかし、現在、人間は、「複雑性の限界」に突き当たっている。人間が一人では解決できないぐらいの複雑性が、ビジネスの場でも生活の場でも立ちはだかっている。これを解決するには、「第3のIT の波」としてのコグニティブ・コンピューティングが必要だ。第3のIT の波とは、第1世代(集計機の時代)、第2世代(プログラム可能なシステムの時代)に続くものであり、「学習するシステム(コグニティブ・コンピューティング)」の時代である。コンピューターにさせたいことが増えた結果、人がプログラミングを作るのでは間に合わず、システム自体が必要なデータを持ってきたりプログラムを変更したりすることが必要になり、AI を使ったコグニティブ・コンピューティングがその役割を担うのである。そのように人の知能を補完するコグニティブ・コンピューティングとして誕生したのが「Watson」である。Watson と、従来のコンピューターとの違いは、人と対話し、様々なデータを理解し、仮定を推論し、学習をくりかえしたどんどん賢くなる過程を経ながら、最終的な判断者である人の意思決定を支援する点だ。Watson は、同社の基礎研究部門が約5年間かけて研究開発した。開発には数百人がかかわり、研究の中心となるコアチームには複数の日本の研究者が参加している。放送開始から50年以上続く米国の人気クイズ番組「Jeopardy」のチャンピオンに勝ちたい、という目標のもとで研究開発がすすめられ、その成果として2011年に同番組にコグニティブ・コンピューティングによる社会の変革~企業がAI(拡張知能)で攻める時~日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)工学博士久世 和資