ブックタイトル進化するフラットパネル・ディスプレイ技術

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進化するフラットパネル・ディスプレイ技術

12 SEAJ Journal 2018. 4 No. 161従来のフィルムセンサと原理は同じである。このメタル配線は、同図(b)に示すように、透過率低下を招かないように発光部(開口部)を避けてレイアウトされる。そのため配線幅は蒸着用メタルマスクの開口より狭く、パターニングにはホトレジスト工程が必要である。従来のOLED に比べて本タッチセンサ内蔵構造はその製法において大きな変更が加えられていることになる。前述のように、これまでTFE 以降の工程では、OLED膜へのダメージを避けるためホトレジストを用いたパターン加工は行われてこなかった。タッチセンサの電極加工はウエットでなくドライエッチングと推定できるものの、それでも従来の製法常識を覆す挑戦である。内蔵化に伴う薄型化、コスト低減が具体的目的となるが、他面ではフレキシブルOLED 生産を追従する他のパネルメーカとの量産技術差を一段と広げておくと言う戦略上の目的もあるものと推定する。しかし、図3のタッチセンサ内蔵のフレキシブルOLED は図1の従来のOLED に比べて効率は改善されない。図4はCF 内蔵型のフレキシブルOLED の推定断面構造である。この構造は効率改善(消費電力低減)を目指すものである。図3のタッチセンサ内蔵型に加えてフィルムの円偏光板が除去され、代わりに樹脂ブラックマトリクス(BM)、内蔵カラーフィルタ(CF)及びアンチリフレクション(AR)フィルムが追加されている。つまり、この追加で円偏光板の効果を置き換えることになる。円偏光板の役割は外光反射を低減することで、明室や野外でのコントラスト比が低下すること、を抑えることにある。図1~図4に示すように、フレキシブルOLED の陰極は半透過電極であり、反射も大きい。材料として反射率の高い薄膜金属(MgAg)で構成され、表示部全面に成膜されている。この構造では、何らかの反射防止機能がないと、明るい環境下ではコントラスト比が大きく低下する。円偏光板はこの反射防止に大きな効果があり、これまで標準的に使われてきた。図5(a)は円偏光板の外光とOLED 発光に対する作用を示したもの、図5(b)は円偏光板と効率改善を目指したCF、BM 及びAR を有するそれぞれの構造に対して測定した反射率の波長依存性の比較である。円偏光板は直線偏光板と1/4λ板の積層である。このため、外光は、1/4λを通過すると円偏光に変換されさらに反射電極で回転方向が反転されるため最終的には直線偏光子でこれが吸収され反射されない。一方で、この直線偏光板はOLED 発光の半分を吸収してしまう。このため外光反射効果は絶大であるが、効率という点では得ではない。一方、図4のCF 内蔵型の構造では以下の複数の作用で反射を低減する。まず、発光領域(開口部)以外は樹脂BM が形成され、この領域では反射は低く抑えられる。次に、開口部には発光層と同色のCF が形成されている。外光を赤(R)、緑(G)、青(B)に分解した場合、該当画素CFの波長色以外(R 画素であればG、B)は吸収され反射しない。さらに、TE 型OLED における有機発光層の厚みは、色再現性を向上するために、出射光半値幅を狭めさらに光強度を増幅させるように共振構造(キャビティとも呼ぶ)設計で決められてきた。外光成分の内、同色CF を透過した該当色はキャビティ内の多重反射効果で外部への反射は低減される。そのため、図5(b)に示すように、 CF 内蔵型OLED は円偏光板を有するものに近い反射抑制効果を持つ。図4 CF 内蔵型フレキシブルOLED 図5 円偏光板の原理と反射率の比較封止膜接着材or 粘着材PI/SiO2/PIPET陰極(半透過)有機発光層(R)陽極(反射)OLED絶縁膜メタルメタルBM 内蔵CF (R) BM内蔵タッチセンサTFTバンクARフィルム外光吸収(b)共振構造OLED波長 (nm)1004外光10045反射光直線偏光板1/4波長板円偏光板反射電極(陰極)OLED発光層円偏光出射光(a)OLED+円偏光板