ブックタイトル進化するフラットパネル・ディスプレイ技術

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進化するフラットパネル・ディスプレイ技術

14 SEAJ Journal 2018. 4 No. 161ある。同表の括弧内に示したGalaxy S8を基準にした計算では、CF 内蔵型フレキシブルOLED は全白表示においてもLCD を下回る低消費電力となる。従って、CF 内蔵型フレキシブルOLED は表示デバイスとして最大のライバルであるLCD の効率(消費電力)を上回ることになる。もちろん、LCD は1年古い製品であるので、その後の改善効果を確認する必要はある。Galaxy S8とiPhone X の相対光源電力には差がある。本稿解説の目的からは多少それるが、その原因を推定しておく。この差は、画素内のドレイン電圧VDD の設定値が両者で異なるためと考える。同表にはそのフィッティング値を示している。このVDD の違いは、iPhone X の全白表示の輝度がGalaxy S8に比べて高く設定してあることと関係する。図6はOLED 画素の基本等価回路と定電流駆動を用いた場合の時間に対するOLED 電圧VEL と輝度L の変化を示す。さらに、図7は等価回路の電圧- 電流特性、すなわち回路の動作点を示す。現在、ほとんどのOLED は定電流駆動を採用している。つまりOLED に流れる電流を一定に保つように駆動する、具体的には駆動TFT(Dr. TFT)を電圧に対して電流が一定の飽和領域で動かす。OLED は時間に対して、発光層劣化でVEL は増加、輝度L は低下する特性を示す(寿命特性)。VEL が増加すると、VDD は固定されているので結果としてDr. TFT の電圧VDS は低下する。定電流駆動では前述のように電圧に対して電流が飽和している領域で使うことを前提にしている。しかし、VEL が大きいと動作点が線形領域に移動し、OLED 電流ID が急激に低下する。これに併せて輝度L も急激に低下してしまう。寿命による輝度低下が大きく見えてしまう。これを軽減するには、飽和領域で常に動作するように、あらかじめVDD を高く設定しておく必要がある。今回のiPhone X では全白輝度が高いことが背景にありVDD を高く設定したものと考える。OLED 材料の変更などが原因では無いと思う。話は少し脱線したが、以上にようにCF 内蔵型のフレキシブルOLED は効率を2倍に改善できる可能性が高い。これは消費電力低減として使っても良いし、OLED の最大課題の寿命改善にも使うことができる。しかし、製造と言う視点ではTFE 以降に多くのホトエッチニング工程を持つことになる。これは、パネルメーカ投資額が増加する、工程長が長くなることで歩留まりが低下する、懸念が発生する。従って、この方式の量産適用は、歩留まりを慎重に確認しながら進められると考えている。一方、偏光板などの機材フィルムは基材と粘着材の多層構造である。フォーダブルのように多数回の折り曲げに耐える仕様が要求された場合、粘着材の偏りの発生がその曲げ回数を制限すると言われている。従って、今後、CF 内蔵フレキシブルOLED は、フォーダブル対応の小型機器デビューのタイミングで量産が検討されるものと推定している。4.おわりにスマートフォンなどの小型機器に使われているフレキシブルOLED の現状と将来の技術進化を、効率改善の視点でまとめた。ポイントはOLED の封止膜上に形成されている機能材のタッチセンサと円偏光板の内蔵化あるいは代用化である。既に、昨年からタッチセンサの内蔵化は開始され、製法的には封止膜上でホトエッチング工程を行っている。これは、過去の製法上の常識を覆す変化である。この延長上に、外部反射を抑える円偏光板をCF 内蔵で代用する方式がある。この方式は、パネルメーカの投資が増加する、図6 OLED 画素の等価回路と特性の経時変化図7 OLED 経時変化による動作点の移動時間(対数)1輝度L半減寿命0.5電圧 VEL電流ID輝度T95 T50VDDVDSVELiDDr. TFTOLEDCSTGVGVSVDVdataVscan(a)(b) (b)(a)電流 OLEDΔIDVEL VDSDr. TFTVDD電圧V VDS EL(VDDマージン無)VEL(VDDマージンUP)電流 OLEDΔID=0VEL VDSDr. TFTVDD電圧VDS