ブックタイトルセミコンコリア2018と韓国半導体事情

概要

セミコンコリア2018と韓国半導体事情

16 SEAJ Journal 2018. 4 No. 161韓国政府は、これから本格化するであろう人口知能（AI）時代を見据えた次世代半導体研究開発（R&D）に大規模投資を断行する。脳模倣型の超低電力半導体の設計をはじめ、素子やパイロット生産向けR&D に国の力量を集中する。AI 時代にはソフトウェア（SW）だけではなくハードウェア（HW）においても、韓国は世界半導体市場を牽引したいという狙いだ。韓国半導体産業の現状と戦略、装置メーカーの動向や「セミコンコリア（SEMICON Korea）2018」をレビューする。半導体は全体輸出の17％強占める韓国半導体産業が未曾有の絶頂期を謳歌している。2017年通年半導体輸出規模は、前年比57.4％増の979億ドルで、全体輸出額（5729億ドル）の17％強を占めている。半導体のおかけで韓国輸出規模の推移は、16年11月から17年12月まで14カ月連続プラス成長を記録。「半導体景気の錯視」ともいうべく、韓国経済における絶対的な存在感を誇っている。また、17年に史上最大の営業利益を達成したサムスン電子とSK ハイニックスは、18年4月頃、10兆ウォン（約1兆円）程度の法人税を納める見通しだ。大手半導体企業2社が1兆円規模の税金を納付するということは、半導体に対する韓国民の信頼度は計り知れないほど高くなる。17年に53.6兆ウォン（約5.36兆円、このうち半導体部門は35.2兆ウォン）の全社営業利益を計上したサムスン電子は、7.5兆ウォン（約7500億円）を国内法人税として支払うと推算される。7.5兆ウォンとは、16年基準の韓国全体法人税の14.4％にも達する金額だ。また、13.7兆ウォン（約1兆3700億円）の利益をあげたSK ハイニックスも2.5兆ウォン（約2500億円）程度の法人税納付を予定している（図表1）。特に、2社は18年度半導体分野の設備投資として30兆ウォン（約3兆円）規模を策定している。大規模な設備投資によって、関連企業の売り上げ増大と雇用創出などを生み出す好循環に繋がるわけだ。韓国経済の基幹的な構造は輸出主導型。この輸出を牽引するのがサムスン電子をはじめとする大手財閥系企業なのである。いくつかの政権が財閥改革を10数年間進めてきたものの、完全な財閥改革と経済成長との二刀流は、そう簡単に成し遂げられないのが、韓国経済のジレンマでもある。次世代半導体R&D に2500億円投じる韓国政府は、次世代半導体技術開発に向けて、国家主導で大規模なR&D 投資を進める。韓国は第4次産業革命を牽引すべく次世代半導体産業を先取りするために、2兆5000億ウォン（約2500億円）に達する国家プロジェクトに取り組む。現状のメモリー半導体に加えて、非メモリー半導体の国家競争力を強める狙いだ。韓国科学技術情報通信省と産業通商資源省は、国家総力戦で半導体R&D プロジェクトを企画している。同プロジェクトには韓国電子通信研究院（ETRI）、韓国電子部品研究院、韓国科学技術研究院（KAIST）、韓国標準科学研究院（KRISS）など国家研究機関の半導体専門家や大学教授など50人余りが2017年初頭からプロジェクト推進のための詳細を詰めてきている。科学技術情報通信省と産業通商資源省は17年9月にも公聴会を開催し、企画財政省と韓国科学技術企画評価院（KISTEP）に予備妥当性の調査を申請。予備妥当性とは、大規模な予算が投入される国家プロジェクトに対する経済性を事前に検討する制度である。道路、港湾、鉄道など国土開発分野以外に、2.5兆ウォン規模のR&D プロジェクトが始動されるのは、非常に異例のことだ。つまりは、半導体は長い間、韓国輸出産業の大黒柱であり、セミコンコリア2018と韓国半導体事情○韓国政府、AI 向け半導体R&D に巨額投資　　○半導体輸出額は前年比57.4％と急増○「セミコンコリア2018」歴代最大規模へ産業タイムズ社　ソウル支局長　嚴オム　在ジェーハン漢8.7812.79 13.635.238.85.1 5.33.213.7 14.50510152025303540452014 2015 2016 2017 2018(予)(単位:兆ウォン、1円は10ウォン換算 サムスン電子は半導体事業部門のみ)サムスン電子とSKハイニックスの営業利益の推移と見通しサムスン電子SKハイニックス図表1　サムソン電子とSK ハイニックスの営業利益の推移と見通し