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株式会社堀場エステック

開発本部 開発2部 液体・気化開発チーム 平井 惣一朗

この業界に入ったきっかけ

私は半導体業界というものをあまり意識せず、この業界に足を踏み入れました。私が入社した堀場エステックが半導体業界に関係する会社であることはホームページから理解していましたが、入社するまでは、半導体に対する知識がなく、半導体とは「PCやスマートフォン等に使用されているもの」という漠然としたイメージしか持っていませんでした。

大学では流体力学を専攻しており、学んでいく中で流体という目に見えない物質の性質や流れを扱う分野に面白みを感じるようになりました。将来も大学で得た知識を活かして流体に関わる仕事に就きたいと思うようになり、就職活動を行っている中で出会ったのが流量制御機器(マスフローコントローラー)の開発を行っている堀場エステックでした。半導体業界の知識がないことに対する不安もありましたが、研究室の先生方から「半導体業界は今、大きく成長しており、今後も大きな成長が期待されている業界だ」と後押ししていただいたことから、堀場エステックへの入社を決めました。

仕事内容、はたらき方、日常のできごと

私は2015年に入社以来、半導体製造装置で使用される液体材料気化システムの設計・開発に関わっています。半導体製造において、半導体デバイスの高機能化には、超微細化技術や三次元化技術を用いて生産され、絶縁膜をはじめとする、さまざまな「薄膜」がシリコンウェーハ上に形成されます。この「薄膜」とは1μm未満の薄い膜を指し、通常の機械加工では製造ができません。そこで使用されるのが成膜装置と呼ばれる半導体製造装置であり、CVD(化学気相成長)やALD(原子層堆積法)といった成膜方法を用いて成膜します。薄膜を形成するにあたり、液体材料を使用されることがありますが、チャンバーと言われる反応炉へ材料導入するときは、液体のままではなく、ガス状態で供給する必要があり、ここで液体材料気化システムが必要になります。最近用いられている液体材料は反応性が高く非常に高価なものが多い為、液体材料を正確かつ高速に測定し、完全気化することが重要となります。液体材料の特性や成膜のプロセス条件に適した液体材料気化システムの設計・開発が私の仕事です。

液体材料気化システム MV-2000 Series
液体材料気化システム MV-2000 Series

私の働き方は、一昨年までは定時に出社する業務形態を取っておりましたが、昨年からのコロナ禍の状況を踏まえ、テレワーク業務も積極的に活用し、現在では業務に合わせて仕事場を柔軟に選択することが可能となりました。その為、様々な知見者と話し合いながら進める必要がある試作や評価といった業務は出社して行い、個人で集中して取り組みたい評価のデータ整理や資料作成といった業務はテレワークで行うようにして、効率の良い働き方を心がけながら仕事に取り組んでいます。
仕事以外でのできごととして、最近はエールビールにはまっています。日本ではのど越しや切れ味の良いラガービールが主流ですが、エールビールは苦みが強く、ホップの香りが豊かであることが特徴です。両者は同じ原材料で作られていますが、そう思えないほど味わいが異なります。最近はスーパーで様々なエールビールが並んでいますので、子どもの寝かしつけや家事がひと段落した後、夜な夜な嗜むのが楽しみとなっています。

最近はまっているもの
最近はまっているもの

仕事のやりがい、また厳しさ

私が担当する液体材料気化システムは直接気化方式と呼ばれ、液体材料の供給量を制御する為の流量制御部とインジェクション構造および加熱機構により効率よく材料に熱を与えることで瞬間気化を行う気化部で構成されています。

この液体材料気化システムに対して求められているパフォーマンスの1つが完全気化です。お客様のプロセス条件で設定流量を完全に気化してチャンバーに安定供給することが求められます。
液体を気化するということはお湯の沸騰など日常的に見ている現象であり、簡単なことのように思われるかもしれません。しかし、液体から気体へ相変化が起こる際には気化潜熱という熱を周囲から奪います。これが内部の温度低下につながり、延いては気化量の低下につながります。その為、瞬時に温度低下を検知し、設定温度までリカバリーしないと安定した気化供給ができません。「では設定温度を高めに設定しておけばいいのでは?」と思われるかもしれません。一部の液体材料はそれで安定供給も可能ですが、半導体製造プロセスで使用される多くの材料は必要以上に温度を高めることで熱分解が生じます。

実験風景
実験風景

この熱分解によってできた生成物は液体材料気化システム内部の流路閉塞や生成物がウェーハ表面に付着することによるウェーハの品質低下を招く為、単に温度を上げるのではなく、低温で効率よく気化を安定して行うことが可能な、気化性能の高い液体材料気化システムが必要です。こういった性能の実現には熱交換距離を長くし、低温でも十分に熱交換を行えるようにすることが一般的です。しかし年々、半導体製造装置の省スペース化によるフットプリント低減要求が強まっており小型化も求められています。

このように小型化かつ気化性能向上という二律背反とも言える製品の実現が市場のニーズであり、高い技術力が求められている為、もちろん一朝一夕で実現できるものではありません。構想を練り、時には立ち止まり、試行錯誤を繰り返し、多くの知見を持っている先輩方から様々なサポートをいただきながらチーム一丸となって日々、可能性を追求しています。求めている結果が得られない時はもどかしさがありますが、過程で得られた新たな気づきや学びもあり、難しいことに挑戦することにやりがいを感じています。

この業界に入って良かったこと、学生へのアピール

半導体は我々の生活に大きく関係しています。PCやスマートフォンはもちろんのこと、家電製品やウェアラブル端末、音楽機器、自動車など、身近なもののほとんどに半導体が関わっています。さらには自動車の運転やレジ係、ホテルの受付係などこれまで人間が行ってきた仕事でさえ、半導体を用いたシステムに置き換わりつつあるように、我々の生活スタイルに大きな変革をもたらし始めています。こういった時代の変化を生む半導体という先端技術に触れられることがこの業界の魅力であると感じています。

半導体については敷居が高いイメージを持たれている方も多いと思いますが、半導体業界だからと言って半導体の専門知識がないと関わることができない訳ではありません。
現に私は流体力学という一見、半導体とは無縁な分野を学んできましたが、半導体業界に関わり、仕事を行っています。
半導体製造装置も一般工業製品と同様に機械、電気、ソフト、物理、化学など、様々な分野の方々の活躍の場が広がっており、誰しもが半導体業界に関わり合いを持つことが可能であると私は思います。
半導体という先端技術に興味のある方や、半導体業界に興味のある方、またこの「社会人ライフ」を読んで少しでも半導体業界へ興味が沸いた方は、今後の進路選択の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。是非ともに半導体業界で世の中の発展に貢献していきましょう!

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